リビドー

フィクションの中で窒息死するまでセックスしたい

憂鬱の中の快楽と快楽の中の憂鬱

ハメ撮りくんはイケメンのセフレくん。

 

年末のセックス納めをしようと考えたものの、帰省やら旅行やらで誰にも構ってもらえず、再インストールしたマッチングアプリで出会ったのが彼だった。

 

彼は細身でお洒落で、メンズ雑誌の読者モデルのような風貌をしている。タイプではないが、2019年を締め括るには申し分ないだろう。

彼が調べてくれた池袋のラブホテルは古かったが、妙に落ち着くことができた。

 

彼はホテルでシャワーを浴びない。初回もその次もそうだった。

着エロが好きで、真っ赤なネイルをした手足の指を舐めるも好きだ。

キスをしているときには唾液を入れてくるし、極めつけにバレないと思ったのか隠しハメ撮りをした。

 

iPhoneのカメラと目が合う中、違法サイトにアップロードするのだろうか、その際の報酬金はいくらになるのだろうか、それともこの動画をおかずにオナニーするのだろうか、そんなことを考えていた。

いずれにしても私は死ぬわけじゃない。最悪、死んだっていい。そう思うと気がラクになり、昼食で膨れたお腹のことや崩れた化粧のことだけが気になった。

 

彼は私を平気で1時間も待たせる。

遅れてごめんねと綺麗な顔で言われるとそれまでの苛々が嘘のように消えて失くなる。

そのまま私も消えて失くなれたらと思う。


彼は私に、彼氏に立候補するよと言う。

純粋になんの躊躇いもなく嘘をつける人を私は愛おしく思う。


満たされようと考えれば考えるほど満たされなくて、私の生まれつきの憂鬱はその深さを限りないものへと進化させていく。