リビドー

フィクションの中で窒息死するまでセックスしたい

剥き出しの痛覚

バックパッカーくんは青春を共にしたセフレくん。

 

他校の野球部だった彼を初めて認識したのは練習試合でのことだった。

当時流行っていたマイプロフィールのBBSから連絡してくれた時には、女子高生特有の高揚感を感じたことを覚えている。

 

彼と私は両想いだった。

それでも恋人にはなれないまま離れ離れになり、進展がないまま社会人になった。

夏期休暇を利用して上京した彼と久しぶりに会うことになり、そのまま渋谷のラブホテルでセックスをした。

 

友人としての彼を失うことの怖さに怯んでいた私に彼は、10年待ったんだからいいじゃんと言った。

10年、その間私は何度も期待し、何度も裏切られたような気がする。

 

好きだったのかと問われると、今となっては好きではなかったと断言できる。

女子高生の恋愛に対するエネルギーによって熱を感じていただけのように思う。

それでもこのセックスは私の10年越しの初体験だ。

ナンセンスな言葉だと自分自身を鼻で笑いながら、中に出してと請い、満足感だけが残った。

 

物理的な距離が遠い彼とは、長期休暇になる度に利用するだけの関係に変わった。

去年の夏は必ずセックスしなければならなかった私にとって、その夏にだけ連絡が来なかったことは地獄に突き落とされたような気持ちにさせられた。

夏の鋭い日差しが全身に突き刺さるような痛みを感じる。

プラスチックのように灼熱のアスファルトの上で溶けてしまいたいと願う。

 

ベッドの上で繋がっているときだけが唯一誰かと共存していることを実感する。

精子が放たれた途端に孤独に戻る。

私はいつもひとりだ。

 

間が抜けたような通知音が鳴る。

届いたばかりの彼からのラインを未読にしたまま、非表示に設定する。

過去が書き換えられたような気がした。