私は18歳で家を出るまで、小さな港町で生まれ育った。
時代の流れなんてない、陰気臭い田舎が息苦しくてたまらなかった。
幼い頃から自分の置かれている状況を俯瞰して見る癖があった。
両親や学校の先生の思考なんて簡単にわかったし、何をしたらプラスの評価がされるのかを考えて行動していた。
成績はいつも一番だった。
パーソナリティ障害を言い訳に感情のまま行動する姉と、末っ子長男で可愛がられて育った弟の間で、自分の価値が希薄であることは明白だった。
勉強ができて、理性的で、自立している。
そんなキャラクターを自他共に自分に植え付けて、時には冷たい人だとも言われた。
私が私である意味なんてなくて、期待されることだけ熟していればわたしを取り巻く世界は平和に回るのだとわかっていた。
恋愛に於いても同じで、何を言ったら男は喜ぶのか、何をしてあげたら男は満足するのかだけを考えて、いくつかの収穫を得ると愛のない恋愛ごっこに終止符を打つのが決まりだった。
どんな男でもセックスしているときだけは私を愛してくれた。セックスしているときだけは私をひとりの女として扱い、セックスしているときだけは無条件で喜んでくれた。
男を受け入れている時間だけが自分でいられるような気がする。自分に価値があるのだと錯覚する。
パンツに付いた鮮血は私を殺す。
生理の一言で男は私を手放していく。
私の価値はセックスできるマンコだけであり、それ以外は存在していないことと同じだ。
ホルモンに乱される私は誰の期待にも応えられずに、ひとりベッドの中で死を待つだけの時間を過ごす。
どうして生きているのだろう。
自己肯定できる日が来ることは生涯ない。